徳島地方裁判所 昭和47年(わ)93号 判決 1973年6月21日
主たる事務所の所在地
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字高砂五番地
医療法人
敬愛会
右代表者理事長
川端富美子
本籍
徳島県鳴門市撫養町斎田字岩崎九五番地
住居
同県同市同町土佐泊浦字高砂一六番地
医療法人敬愛会理事
川端須美子
昭和四年九月八日生
右被告法人及び被告人に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
検察官 竹内俊一 出席。
主文
被告法人を罰金四〇〇万円に、被告人川端須美子を徴役四月にそれぞれ処する。
但し、被告人川端須美子に対し、この裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告法人(当時の代表者理事長川端正雄)は、徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字高砂五番地に主たる事務所を置き、病院を経営し、科学的で且つ適正な医療を普及することを目的とする医療法人であり、前記川端正雄の妻被告人川端須美子は、同法人の理事として、前記川端正雄を補佐し、その事務一般を統轄するものであるが、同法人の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一、昭和四三年四月一日から昭和四四年三月三一日迄の事業年度において、被告法人の所得金額が二、三〇四万〇、五七五円で、これに対する法人税額が七七七万五、四〇〇円であるにもかかわらず、公表経理のうえで収入の一部を除外したり、架空の費用を計上するなどの行為により所得を秘匿したうえ、昭和四四年五月三一日、鳴門税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、二二〇万六、二二一円で、これに対する法人税額が三九八万三、五〇〇円である旨の虚偽の同事業年度の確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記納付すべき税額との差額である右事業年度の法人税三七九万一、九〇〇円を免れ、
第二、昭和四四年四月一日から昭和四五年三月三一日迄の事業年度において、同法人の所得金額が一、八三二万七、七六一円で、これに対する法人税額が六一六万七、七〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四五年六月一日同税務署において同税務署長に対し、所得金額が三二三万〇、〇五七円で、これに対する法人税額が八八万三、七〇〇円である旨の虚偽の同事業年度の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記納付すべき税額との差額である右事業年度の法人税五二八万四、〇〇〇円を免れ
第三、昭和四五年四月一日から昭和四六年三月三一日迄の事業年度において、同法人の所得金額が二、七六九万六、一二三円で、これに対する法人税額が九八七万五、七〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四六年五月三一日、同税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五五五万七、三七〇円で、これに対する法人税額が一七三万九、六〇〇円である旨の虚偽の同事業年度の確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の法人税八一三万六、一〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき、
一、登記官櫛田武作成の登記簿謄本
一、被告法人代表川端正雄作成の証明書
一、大蔵事務官香川俊夫作成の告発書
一、被告法人代表者川端富美子、被告人川端須美子の当公判廷における各供述
一、被告人川端須美子の検察官に対する供述調書
一、同被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書三通
一、同被告人作成の上申書四通
一、証人香川俊夫の当公判廷における供述
一、川端正雄、前川高、森栄世、中野正恵、香川俊夫の検察官に対する各供述調書
一、大蔵事務官香川俊夫作成の脱税額計算書三通
一、川端正雄、前川高(四通)、森栄世(但し、六枚目六行目の「次に賞与について述べます」から七枚目六行目の「手渡すこともあります」迄の記載部分を除く)、矢倉真弓、熊野明、高瀬真一、阿部照雄、和田良子、福家礼子、橋本次二郎、亀田悌治、香川正昭、大場和雄、赤川利治、村上卓、川原金行、大竹孝、中野正恵、市原兵二郎、善積千佐子、重本寿明、吉成武雄、伝宝文夫、唐木ミサオ、四宮盛子、福田納、今津靖郎、前田守、吉成茂彰、木村憲治、川崎明徳の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大蔵事務官土井照則作成の証明書四通
一、橋本昭、田中利雄、能田忠雄、森幹雄(二通)、河西康夫、藤村文男、四宮正則作成の各証明書
一、川端正雄、宝積邦雄、羽藤幸夫、宮野政已、岩朝正義作成の各上申書
一、前川高作成の鑑定書と題する書面
一、大蔵事務官南友春、同香川俊夫作成の各捜索てん末書
一、大蔵事務官香川俊夫(四通)、同小橋正水、同加古治政作成の各領置てん末書
一、押収してある元帳三冊(昭和四三年度分は昭和四七年押第八三号の一、昭和四四年度分は同押号の二、昭和四五年度分は同押号の三)、源泉徴収簿六綴(同押号の四)、出勤簿綴一二綴(同押号の五)、出張命令書綴五綴(同押号の六)、個人分関係書類綴一綴(同押号の七)、昭和四三年度雑綴二綴(同押号の八)、当座勘定照合表綴(四国銀行分)一綴(同押号の九)、給料受領書綴三六綴(昭和四三年度分一二綴は同押号の一〇、昭和四四年度分一二綴は同押号の一一、昭和四五年度分一二綴は同押号の一二)、昭和四五年度病院日誌三綴(同押号の一三)、昭和四四年度外来日誌三綴(同押号の一四)、領収書綴六綴(昭和四三年度分二綴は同押号の一五、昭和四四年度分二綴は同押号の一六、昭和四五年度分二綴は同押号の一七)、請求書綴三七綴(昭和四三年度分一二綴は同押号の一八、昭和四四年度分一二綴は同押号の一九、昭和四五年度分一二綴は同押号の二〇、中野商店分一綴は同押号の二二)、一般治療分領収書控一三綴(同押号の二一)、賞与明載綴三綴(昭和四四年度分一綴は同押号の二三、昭和四五年度分一綴は同押号の二四、昭和四六年度分一綴は同押号の二五)、預り証一通(同押号の二六)、名刺一枚(同押号の二七)、譲渡証明書綴一綴(但し辞任届二通添付、同押号の二八)、学校法人川崎学園寄付行為写一冊(同押号の二九)、預り証控(写)一枚(同押号の三〇)、新入学生名簿一綴(同押号の三一)、裏預金メモ一綴(同押号の三二)、解約済定期預金証書一枚(同押号の三三)、定期預金元帳一枚(同押号の三四)、取引状況調一枚(同押号の三五)、売上日記帳一冊(同押号の三六)、売掛補助簿一綴(同押号の三七)、法人税確定申告書三綴(昭和四三事業年度分一綴は同押号の三八、昭和四四事業年度分一綴は同押号の三九、昭和四五事業年度分は同押号の四〇)
(法令の適用)
被告人川端須美子の判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法第一五九条第一項に該当するところ、所定刑中徴役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を徴役四月に処し、情状により同法第二五条第一項第一号を適用してこの裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。被告法人に対しては法人税法第一六四条により判示第一ないし第三の各所為につきそれぞれ同法第一五九条第一項所定の罰金刑で処断することとなるが、以上は同法第四五条前段の併合罪なので同法第四八条第二項を適用してその合算額の範囲内で罰金四〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 福家実)